3.病棟看護師が仕事やめたいなと思う瞬間とそう感じる人へのメッセージ

看護師

私は2016年から2022年までの7年間大学病院の病棟看護師として勤務していました。やりたかった夢の仕事に就くことができ、はじめは患者さんと関われることや医療行為が技術として身についていくことへのやりがいを感じていました。しかし、経験を重ねていくとやりがいよりも「やらないといけないこと」に追われるようになりました。

「ナースコール」というスイス・ドイツ合作の映画はご存知ですか?2026年3月6日に日本でも劇場公開され、看護師間で話題になっています。描かれているのは「病院の人手不足と医療現場の過酷な現実」私はこの映画を見てすごくリアルな医療現場が描写されているなと思いました。日本だけでなく、ドイツやスイスでの看護師も働くうえで同じような思いがあるのだなと感じました。この記事を読んで少しでも看護師の現状を理解することができ、看護師の労働環境が改善に向かえばといいなと思います。

1|病棟看護師が仕事やめたいと思う瞬間

病棟看護師が仕事を辞めたいなと感じる瞬間には以下の4つのときが挙げられます。一つずつ詳しく見ていきましょう。

1-1|やりがいを感じなくなったとき

私が病棟看護師のやりがいだと感じることは、患者さんと直接コミュニケーションが取れることです。入院して化学療法や手術に臨む不安な患者さんの気持ちに寄り添い看護すること、一緒に看護計画を立てて退院まで看護することはとてもやりがいに感じます。目の前で頑張っている患者さんと毎日会話をすることや前向きな気持ちになって一緒に頑張って治療を乗り越えることは何にも変えられないやりがいです。また、看護師の資格を持っているからこそできる医療技術として点滴ルートの挿入や採血があります。その他にも病棟特有の技術を日々身につけて自分の技術が向上していくのを感じることもやりがいの一つです。患者さんと関わりたいのに多重業務のために充分な時間が確保できない、3年以上働いてある程度一人前に病棟業務が行えるといった環境でやりがいを感じなくなる瞬間が仕事やめようかなと悩む時だと思います。

1-2|人手不足で多重課題になったとき

看護師の人手不足は話題になっていますね。私の働いていた病院でも日勤で看護師10名いればいい方で、土日や少ない日だと看護師が6人しかいないなんてこともありました。患者数は満床時50人です。リーダー看護師は医師や検査部門との電話調整、入退院患者の対応のためナースステーションにいることが多く受け持ち患者さんをつけられません。新人看護師も人数に含まれるため、1人の看護師が10人担当するなんてことも日常茶飯事でした。

※以下は私が当時働いていた日勤時間帯の業務一例です。

8:30 夜勤からの申し送り

8:45 病棟ラウンド挨拶と朝の配薬、環境整備

9:00 チームカンファレンス、業務調整

9:30 点滴作成

10:00 朝の点滴交換 入退院の対応 バイタルサインの測定

11:00 清潔ケア

12:00 食事介助(看護師も休憩を回すため一旦ナースステーションに戻ります。)

13:00 昼の配薬、口腔ケア

14:00 午後のラウンド開始 残りの清潔ケアやストーマケア、入院患者さんへの説明など

15:00 午後の点滴作成や尿やドレーンの破棄

16:00 点滴交換

16:30 リーダーへ申し送り

17:00 夜勤申し送り

上記は時間でやらないといけないことの一例です。その他にもナースコールの対応、手術や検査の出し迎え、急変対応などやらなければならない業務は多岐に渡ります。時間時間でやらなければならないことが多く、受け持ち患者さん全員分の点滴を回るだけでも1時間かかることもあります。やらなければいけない業務が多すぎて常に多重業務、優先順位をつけて動かなければなりません。やりがいを感じている暇はないと言えるでしょう。

1-3|命と向き合うことに距離を置きたくなったとき

そして一番大きなことは少しのミスが患者さんの命に関わるという責任が伴うことです。日勤業務中は常に多重課題を抱えて優先順位を考えて動きながら、新たなナースコールの対応などで次々にやることが増えていきます。仕事一つ一つに丁寧に時間をとっていられない現実があります。しかし、点滴の投与速度のミスで患者さんの心臓へ負荷がかかること、ベッド周囲の環境整備を怠ると転倒や転落のリスクが伴います。ひとりで歩けない人や認知症の患者さんはトイレにも付き添わないといけない。この常に多重課題の中で少しでも早く業務をこなしていかないといけない状況下であってもミスが許されないという環境こそ看護師が追い詰められていく原因になります。勤務を終えて自宅までの帰り道に「あ〜今日も一日誰の命も奪わなくてよかったな」と感じる時はもう限界かもと思います。

1-4|ライフステージの変化で仕事よりも大事なものができたとき

病棟看護師は新卒で毎年5人程度入ってくるので20代が多く活躍している現場です。3年目で新人指導役としてのプリセプターを担います。このため3年続ければある程度1人前という感覚です。5年目以降は病棟リーダーや委員会などの病院全体としての役割が与えられていきます。20代後半で結婚する人も多く、結婚相手が遠方でなどの事情がない限りは、寿退社する人はほとんどいません。そして妊娠して産休に入ります。結婚相手にもよりますが、産休復帰してからは時短勤務で外来業務や検査部門での復帰が多いです。「産休前と同じように病棟でバリバリ働きたい」「自分のキャリアを伸ばしていきたい」そう考えている人は多いと思いますが、子供の急な体調不良や保育園のお迎えに対応しなければいけなくなるため第一線に復帰する人はごくわずかという現状です。仕事よりも子供や家庭が大事と思う時は「この病棟看護師という仕事にこだわらなくてもいくらでも働き方はある」「このままでいいのかな」とキャリア変更を悩む時期かなと思います。

2|仕事をやめたいと感じている看護師へのメッセージ

1|で述べた4つの“仕事を辞めたいと感じる瞬間”は共感できましたか?辞めたくても辞められない。辞めたいけど次に何をしたら良いか分からない。このままでいいのか思い悩んでいるという方へのメッセージです。

2-1|自分にとってのやりがいを大切にしてほしい

看護師という仕事一つにしてもやりがいは人それぞれ違います。ICU看護師や手術室看護師、病棟看護師など部署によってもやりがいは違ってきます。新卒で所属してその部署で3年続けていると「楽しい」とやりがいを感じる瞬間が必ずきます。その気持ちを忘れないでほしいです。

2-2|ライフステージが変わってもその仕事をしたいと思うか

結婚する前に今後の看護師人生をどうしていきたいのか考えてほしいです。私は交際相手が医師であったので「病棟看護師はやりきった」「やりたいことは全て行えた」と思ってから結婚しています。結婚して出産してからは「家庭や子供は私の仕事」だと思っているので、病棟看護師に戻りたいとは思いません。結婚出産後も病棟看護師を続けたいと思っている人であれば、夜勤や残業はあると思うので家事や育児に協力的な結婚相手を見つけないといけないと思います。一番大切にしたいことを優先できる環境であってほしいと思います。

2-3|看護師として理想の労働環境とは

看護として理想の労働環境とはなんでしょうか?私は患者さんと関わることが大好きです。身近に患者さんの意見を聞いて看護を実践していく、そして目の前にいる患者さんや家族が目に見えて回復していく姿や病気と向き合っていく姿に寄り添うことでやりがいを感じます。「時間に追われて今日もやらなければならないことしかできなかった。今日患者さんとゆっくり話せたかな?」と思い悩む日々ではやりがいは感じられません。結婚して家族ができた今でもその気持ちは変わりません。病棟看護師としては叶えられないけれど他の方法で看護師として患者さんと関われる、自分なりのやりがいを感じられる働き方はあります。結婚して出産したら辞めていく看護師が多く、潜在看護師が増えていく社会ではいけないと思います。どんなライフステージにいたとしても看護師がやりがいを持って働ける環境こそが大事であると感じます。

3|まとめ

今回は、病棟看護師が仕事辞めたいなと思う瞬間について書きました。病棟看護師が仕事辞めたいなと思う瞬間は下記の通りです。

1)やりがいを感じなくなったとき 2)人手不足で多重課題になったとき 3)命と向き合うことに距離を置きたくなったとき 4)ライフステージの変化で仕事よりも大事なものができたとき

今辞めたいと感じている人は、「楽しい」と感じていた瞬間を一度思い返してみてください。その楽しかったやりがいを感じていたことよりも今の「辞めたい」という気持ちが勝つのかどうか、このまま仕事を続けていてその楽しい気持ちに戻ることができないのであれば部署や働き方を変えるチャンスなのかも知れません。また、結婚や出産を機に自分の仕事のやりがいは変わってきます。自分にとって何を一番大事にしたいかを考えてライフステージの変化にも対応できるようにしてほしいと思います。看護師の人材確保だけでなく、様々なコメディカルとも協力しながら看護師の多重業務を少しでも減らしていくことができればやりがいを持って働ける第一歩になるのではないかと思います。結婚や出産などのライフステージの変化があったとしても、第一線に復帰できる環境が整っていれば今よりもっとやりがいを持って働ける看護師が増えていくと思います。

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